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町内会・認可地縁団体と登記 その2 これまでの法改正や制度改正の流れ

 町内会名義で不動産登記ができるか、できるとして、どのような手続きが必要かを考える前に、まずは、これまでの、法改正、判例の考え方、制度改正の流れをたどっていきたいと思います。
 
 なお、文章中、権利能力なき社団という言葉が出てきます。
 権利能力なき社団とは、法人のように権利能力があるとは認められていない社団(人の集まり)ということになります。
 町内会の全てが権利能力なき社団というわけではありませんが(権利能力なき社団と呼べるためには判例上、いくつかの要件があります)、ここでは、説明を簡単にするために、町内会=権利能力なき社団ということにしておきます。

 従来から登記実務では、町内会(権利能力なき社団)名義の不動産登記はできないとされてきました(昭和22年2月18日民甲第141号民事局長回答参照)。
 この先例は、町内会についてのものではありませんが、権利能力なき社団名義での不動産登記を否定しています。

 ではどうすればいいかというと、代表者個人もしくは構成員全員での共有名義で登記することになります(昭和23年6月21日民甲第1897号回答参照)

 なお、「東京町内会長 調布太郎」というように肩書付で登記できないかが問題となりますが、こういった肩書付の登記もできないとされています(昭和36年7月21日民三635号回答参照)。

 判例も、権利能力なき社団名義での不動産登記を否定しています(最判昭和47年6月2日 民集26巻5号957頁参照)。

 ここまでを整理すると、

町内会≒権利能力なき社団名義では不動産登記はできない
代表者個人名義か構成員全員の共有名義で登記するしか方法はない
代表者に肩書を付けての登記はできない
 

 ということになります。

 この前提は現在でも生きています。
 従って、現在でも単なる町内会名義での不動産登記はできないことになっています。

 しかし、このことには大きな問題があります。
 実質は町内会の土地であるのに登記上は(形式的には)代表者個人或いは何人もの共有になっているという状態には大きな問題があります。
 このことは登記が実態と異なっていることを意味し、不動産の権利関係を公示するという登記制度の目的に照らして妥当かどうか非常に問題があると思われます。

 この問題点について書きだすと長くなってしまいますし、今回は、制度や法改正の流れについてなので、問題点については省略します。
 問題点については、次回、書きたいと思います。


 そのような中、平成3年施行の地方自治法改正によって、認可地縁団体という制度が新たにできました。
町内会名義で不動産登記ができないことの問題点・不都合は従来から認識されていましたが、この改正によって、認可地縁団体となること(町内会が自治体の認可を受けること)が必要ではありますが、町内会名義での不動産登記ができるようになったのです。

 町内会名義での登記ができるようになったことは、画期的なことですが、まだまだ問題は山積しています。
 町内会名義での登記ができるようになったことと、現実に町内会名義の登記が出来るかどうかはイコールではないからです。

 分かりやすくするために、ちょっと誇張した事例を基に考えてみたいと思います。
 ある土地について、100年前に、当時の町内会のメンバー100人全てが登記権利者となり、持分100分の1ずつの共有の登記が行われたとします。

 町内会が認可地縁団体として認可を受けたとして、町内会名義にする場合の登記手続きはどのようなものになるでしょうか?
 
 この登記は、認可を受けた日を原因日付とする年月日委任の終了という登記になるのですが、問題はこの登記は、登記申請の大原則通り、登記権利者と登記義務者の共同申請となることです。

 登記権利者は町内会ですが、登記義務者は誰でしょうか?
 
 登記簿上の所有者である共有者100人が登記義務者ということになります。
 登記義務者が亡くなっていれば、その相続人全てが登記義務を承継します。

 従って、この登記は、形式上、共有者となっている100人の相続人全ての同意が必要なのです。

 共有者100人の相続人は何人いるのでしょうか?
 相続人がすでに亡くなっているケースも少なくないでしょうし、相続人にさらに相続が発生したりという数次相続も発生しているでしょう。
 もしかしたら、四次相続くらいまで発生しているかもしれません。 

 家督相続であれば相続人は一人でしょうが、昭和22年ころ以降の相続は現在のような相続制度ですので、権利義務を承継した人はネズミ算式に増えていくはずです。

 それらの人たち全員の同意(協力)がないと、この登記はできないことになりそうです。 

 仮に、今現在の共有者の登記義務を承継した人の数が1,000人になっていたとします。
 1,000人の人全ての協力が得られるでしょうか?

 仮に、町内会名義にすることについて、明確に反対している人がいなかったとしても、登記をするにはハードルがあります。

 全員の実印が必要ですし、委任状(登記原因証明情報も)に実印を押してもらう必要もあるでしょう。
 今は全然関係ない所に住んでいる人の全てが、自分に何の得にもならないのに、印鑑証明書を採ったり、委任状の作成に協力してくれたりするでしょうか?
 海外在住者が登記義務者になるときは、サイン証明を取得する必要があると思うのですが、自分に何の得にもならない手続きのために、領事館に出向いて、サイン証明を取ってくれることに期待していいのでしょうか?

 そう考えると、登記実現のためのハードルは、かなり高そうです。

 もし、反対者がいたり、協力してくれない人がいる場合、登記手続請求訴訟(場合によっては所有権確認訴訟)を提起することも考える必要があるかもしれません。

 さらに、登記義務者の承継者の中に、不在者がいる場合、意思能力に問題がある方がいる場合等はどうすればいいのでしょうか?
 不在者財産管理人や後見人選任して、町内会名義への移転登記手続きを行うことになるのでしょうか?
 或いは、公示送達を利用するとか。


 この辺のことについては、また改めて書きたいと思いますが、考えれば考えるほど、このような面倒な手続きを好き好んでやる人はいるのだろうかと考えてしまいます。

 実際、形式上、共有名義にしておいても、町内会名義への所有権移転登記の手間暇や費用(土地評価額の2%の登録免許税がかかります)を考えれば、そのままにしておいてもいいのではないかと思えてきます。

 しかし、どうしても町内会名義にする必要が出てくる場合もあります。

 例えば、その土地が、道路等の公共事業用地になった場合です。

 このような場合、権利関係がはっきりしない状態で収用が行われる例もあるようです。
 毎年発行されている土地収用裁決例集(ぎょうせい/全国収用委員会連絡協議会編)を見ると、収用の裁決を見ることができますが、所有者を「○○町内会又は登記簿上の共有者の相続人」というようにしたうえで、収用裁決が出ている例を年に数件確認できます。

 ただ、収用という形で解決するよりは、町内会等の協力を得たうえで、実態通り、町内会名義に土地を集約したうえで、買収等が行われるほうが望ましいという判断が行政側にはあるようです。

 いずれにせよ、町内会名義にするには困難が伴い、それによって、公共事業自体を断念したり、必要以上に時間がかかる例もあるようです。 


 こうした事情もあって、平成27年4月から認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例という制度(地方自治法第260条の38、第260条の39)が発足しました。
  総務省のHPにある、地縁団体名義への所有権移転登記手続の改善促進(概要-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせん-)という資料で、この辺の事情を伺うことができます。

 今回は制度改正の変遷をたどるだけですので、この特例についての説明等は次の機会に譲りますが、この特例について一言で言うと、認可地縁団体が所在する市町村長に対して、疎明資料を添付し認可地縁団体の所有する不動産である旨の申請を行い、市町村長が所有を認めた際に証明書が交付される。この証明書を添付することにより認可地縁団体単独で、認可地縁団体への所有権移転登記(もしくは保存登記)が可能となるという制度になります。

 つまり、条件はありますが、共同申請という登記の原則の例外として、認可地縁団体が、登記義務者の協力なく、単独で所有権移転(保存登記)ができる制度ができたということになります。
  
 この制度は、平成27年4月から始まったばかりの制度なので、まだまだよくわからない面も少なくないです。
 ただ、利用例はいくつもあるようなので、今後、分析や解説がまとめられることが期待されます。

 なお、特例ができて以降も、従来通り共同申請で所有権移転登記を行うことはできますので、念のため付記しておきます。


 町内会、認可地縁団体をめぐる法改正や制度改正の流れについては以上となります。
 次からは、具体的な登記や手続きについて書いていけたらと考えています。
 
  
 
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[ 2016/01/06 15:34 ] 不動産登記 | TB(-) | CM(0)
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